オーバーヘッドスポーツに多発するインピンジメント症候群とその原因について

はじめに

テニスのサーブや投球動作などのオーバーヘッド動作において出現する肩関節痛はインピンジメント症候群であることが多いです。

スポーツ現場で非常に多くみられるインピンジメント症候群の解剖学的な解説とその治療法のヒントになるような情報をお伝えしていきます。


こんな人におすすめ!

・インピンジメント症候群に対する理解を深めたい人

・肩関節の勉強をしたい人

・インピンジメント症候群の治療に行き詰っている人


インピンジメント症候群の分類

腱板や上腕骨大結節、肩峰下滑液包が上肢の挙上に際して肩峰や烏口肩峰靭帯・烏口突起などと衝突しておこるものです。

これらはインターナルインピンジメントとエクスターナルインピンジメントに分類することが出来ます。


インターナルインピンジメント

肩甲上腕関節内で関節唇と関節包側の腱板が衝突することにより生じる現象です。

Posterior-superior glenoid impingementとも呼ばれます。

このタイプでは上方関節唇損傷と腱板損傷が併せて発生しやすいです。


エクスターナルインピンジメント

肩甲上腕関節内で肩関節挙上時に大結節や腱板・肩峰下滑液包が烏口肩峰靭帯や烏口突起に衝突する現象です。

さらにこの現象は衝突部位により肩峰下インピンジメントと烏口下インピンジメントに分類することが出来ます。


原因は動的安定機構の破綻であるといわれる理由

インピンジメント症候群の原因として関節包などの働きによる静的安定機構の破綻や腱板や上腕二頭筋長頭などの動的安定機構の破綻が挙げられます。

今回は動的安定機構の破綻に着目して解説をしていきます。


フォースカップルの破綻とインピンジメント症候群

動的安定機構の一部である腱板はインナーマッスルと呼ばれ、上腕骨頭を取り巻くように付着し求心力を発揮します(フォースカップル)。これらは三角筋や大胸筋などのアウターマッスルと共同して効率的な肩関節運動を行っています。

フォースカップルはペアで働くことで上腕骨頭を安定させながら回旋させる運動のことで、Coronal force coupleとTransverse force coupleの2つがあります。

腱板の損傷や癒着などの症状はフォースカップルを破綻させ肩関節の求心性を乱す要因となりインピンジメント症候群に繋がります。


Coronal force couple

矢状面状での安定性を・回旋運動をコントロールします。

上方の三角筋と下方の肩甲下筋・棘下筋・小円筋で構成されます。


Transverse force couple

水平面上の安定性・回旋運動をコントロールします。

前方の肩甲下筋と後方の棘下筋・小円筋で構成されます。


多関節筋の過剰な収縮とインピンジメント症候群

オーバーヘッド動作で非合理的な動作を行うと、筋収縮パターンが適切に働かなくなります。

この場合では多関節筋の活動性が高まり、単関節筋の活動性が抑制されるので関節の安定性が損なわれ不安定な状態になります。

その結果、肩関節挙上時等で関節唇などの構造的安定化機構のインピンジメントが生じます。

この繰り返しでSLAP損傷や上腕二頭筋長頭腱炎等を引き起こしていきます。


Obligate translationとインピンジメント症候群

肩後方関節包や後下関節上腕靭帯の伸張性が低下した症例では肩関節屈曲時に骨頭の前上方偏位が生じることで肩峰下接触圧が高まる状態です。


肩関節後方の硬さと上腕三頭筋の関係性

上腕三頭筋長頭腱は肩甲骨の関節窩結節から起始しているとされていますが、一部の線維はその少し上方の関節唇や関節包にも起始しています。

つまり、上腕三頭筋が硬くなると、その影響は関節唇や関節包にまで及びやすくなるということが考えられます。

よって肩関節後方の硬さは上腕三頭筋にも由来する可能性があり、これがObligate translationやフォースカップルの破綻等を引き起こしていることが示唆されます。


まとめ

今回はインピンジメント症候群に関して考えられる要素についてお話を致しました。

今後も解剖学・運動学的知見に基づいて臨床家向けの記事を作成していく予定です。

是非ご覧ください。

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